鍛高譚ラベル話(北海道の民話)
潮が沖に流れ、海がどんよりとして濁ってきました。
魚達は息が満足に出来ず苦しんでいます。
特に潮に乗っていく者は大変です。
水底に棲んでいるタンタカは、まだ元気がありましたが、
みんなの苦しみを見ているとなんとかしなくては、と頭を悩ませていました。
すると長老の海亀がやってきて言いました。
「あの山の麓にどんな苦しみもいやしてくれる紫の草がある。
私たちは、河出は生きていけないがお前なら大丈夫。
みんなのために行ってその草を取ってきておくれ」
そう言ってはるか遠くにぽこんと頭を出している山をさしました。
タンタカは、勇気を出して川をさかのぼりました
。流れの強い瀬も、滝も乗り越えて、ようやく青い山のすそまでやってきました。
そこは、木漏陽の美しい豊かな大地でした。
紫の草はすぐわかりました。
そのよい香をかいだだけで、長旅の疲れが飛んでいったからです。
しかし、水にいるタンタカは、その葉をとる事が出来ません。
途方にくれたタンタカを、森の動物がみつけて、わけを聞いてくれました。
タンタカの話を聞いた動物達は、かわいそうに思い、
手わけして葉をつみ、川におとしてくれました。
タンタカの持ち帰った葉のおかげで
魚達は元気をとりもどすことができました。ま
もなく潮を帰って来て、海に平和がもどりました。
そして魚達は、
紫の草のある青い山を<タンタカ山>と呼ぶようになりました。
白糖沖から望む<タンタカ山>は
昔も、今も、漁から寄港の時、目印として大切にされています。